竹のバイオマス

日立製作所(東京都千代田区)は3月9日、竹類からカリウムと塩素を溶出させることで発電用木質バイオマス燃料と同等の品質に改質する技術を開発したことを発表した。また同時に、品質改良時に溶出した成分が植物育成剤として利用が可能であることも確認した。

同社は、この技術により、従来バイオ燃料には不向きとされていた竹類を有効なエネルギー源にすることが出来るとしている。それにより、持続可能なバイオマス再生循環システムの確立につながるともしている。

この技術は、林野庁の補助事業である「木質バイオマス加工・利用システム開発事業」として、福岡県八女市と北九州市の協力のもと、2年間にわたり開発を進めてきたものだ。

竹がバイオマス燃料に不向きな理由は

なぜ竹がバイオ燃料に不向きなのかといえば、木質に比べてカリウムの含有量が多く、塩素濃度が高いためである。

まずカリウムが多量に含有されていると灰の軟化温度が680~900℃と低くなり、大型のボイラで燃焼させると炉内にクリンカという溶岩を生成されてしまう。また、竹類は塩素濃度が1,000~5,000ppm(0.1~0.5%)と高く、ボイラで燃焼した場合、耐火物や伝熱管を腐食させやすいといった課題があった。

さらに、低温で燃焼した場合は、ダイオキシン類の発生も懸念されていた。

竹の微粒子化で問題となる物質を除去

同社は、竹のような成長の早い植物の断面は、多孔質の繊維で構成されていることに着目。そこで竹を微粒化し、水に浸すことで、水溶性の物質であるカリウムと塩素類を容易に溶出できるという知見を得た。

そしてこの知見に基づき、粒径6ミリ以下まで竹を微粒化し、水に浸すことで、カリウムと塩素を溶出させることができた。これを脱水することによりカリウム濃度と塩素濃度を低下させたわけである。

この結果、灰の軟化温度を1,100℃以上に向上させるとともに、塩素濃度を木質バイオマス燃料と同等レベルまで抑えることが出来たとしている。また、同技術は、孟宗竹、真竹、淡竹、笹や雑草類、未利用の杉の皮でも同様の効果があることを確認した。

一方、竹の改質により溶出した成分が、リンと窒素も微量ながらも有していることから、植物育成剤としての利用が可能であるとしている。

竹を有効利用し持続可能なバイオマス再生循環システムの確立に

日本において竹は、戦後、タケノコの栽培や竹材の利用を目的に多く植えられたものの、近年、需要減少などから、手入れをされていない竹林が増加している。竹は成長力が非常に強く、根が森林へ拡大、侵入することがある。

このため、竹は、そこに生育する樹木の健全な成長を阻害させ、枯死させることから、他の樹木や生物多様性への影響が大きいとされている。これら課題に対して、放置竹林の拡大防止と、伐採した竹を資源として有効活用することが重要となっていた。

この課題に対し同社は、本技術によって従来バイオ燃料には不向きとされていた竹類を有効なエネルギー源とすることができることを確認した。さらに同社は、同技術の利用によって、持続可能なバイオマス再生循環システムの確立につながるともしている。